日本人の胃と欧米人の胃の違いについて、Vol.4「日本人の胃、欧米人の胃」でお話しましたが、今回は胃腸薬の違いについてまとめてみました。胃腸薬にもお国柄が出ているようです。
1.成分の違いについて
- 日本の胃腸薬には、たいへん多くの種類があります。健胃成分(胃の運動を促す成分)を中心に胃腸薬にしたものや制酸成分(胃酸の出すぎを抑えたり、中和する成分)を中心に胃腸薬にしたもの、また両方の成分を複合した総合胃腸薬などがあります。日本の胃腸薬の場合、特に市販薬は総合胃腸薬が多いとされています。
- 一方、アメリカでは、制酸成分を中心に処方された制酸剤が90%弱を占めています。スイッチOTC(医療用から転用された効き目の強い製品)が最近増えており、胃酸を抑える、ガスを抜くなどハッキリした訴求を持っている製品が目立っています。
- 日本とアメリカでは服用される胃腸薬も大きく異なりますが、それは処方数を比較しても違いがみられます。日本では、4~5成分を組み合わせた処方(なかには10以上の成分を配合したものもあります)がみられますが、アメリカでは1から2成分しか配合していない製品が多いのが特徴です。
- 日本人は、消化に良いものを主食としてきましたので、比較的繊細な胃である一方、欧米人の胃は、動物性食品の消化・吸収のために、胃酸分泌が比較的旺盛で、頑丈であると考えられています。このような違いが、胃腸薬の違いにもあらわれているのかもしれません。
- さて、その他の国はどうでしょうか。ヨーロッパでは、アメリカ同様の制酸剤はもちろんありますが、伝統的なハーブを使用した胃腸薬も多くみられます。薬という感覚ではなくサプリメントに近いかたちで、お茶として服用したり、上手に生活のなかにハーブ(生薬)を取り入れたりしています。また、中国やインド、韓国などのアジア諸国では伝統的な生薬製品が多く取り入れられています。それぞれ自国の伝統的な医学を大事にしているのですね。
2.剤型の違いについて
- 日本では、錠剤のほかに顆粒や散など粉タイプのものが好まれていますが、アメリカでは錠剤、カプセルが主流でボトル入りのシロップタイプ、チュアブル(口の中で噛んで溶かす)など様々な剤型の製品があります。シロップ剤はフルーツ味など風味にも工夫がされているので、人気があるようです。味だけではなく、ピンクなど華やかな色をしているものなどもあり、ドラッグストアの売り場もカラフルです。
成分と剤型から各国の胃腸薬の違いを記しました。現在では、アメリカやヨーロッパで服用されている製品が日本にも登場しています。日本においても食生活の欧米化などが進んでいることに影響をされて、日本人の胃の不快症状も変わりつつある可能性があります。胃の不快症状の原因とご自分の症状とを照らし合わせて一番あう市販の胃腸薬を選ぶには、薬剤師に相談されてはいかがでしょうか。また、市販の胃腸薬を使用しても症状がすっきりしない場合は何か病気がある可能性もあります。放っておかずに医療機関を受診しましょう。