第5回 フグ毒による「しびれ」はなぜ起きる?
神経に作用して「しびれ」させるフグの毒
ちょっと怖い、でも食べたい。私たち日本人が古くからそんな思いでつきあってきたのが「フグ」。てっちりをつつきながら日本酒をクイッと、なんて思い浮かべるだけでたまりませんね。でも、今でこそ安心して食べられるフグですが、昔は毒にあたって多くの方が命を落としたそうです。 フグの毒はしびれるといいます。これはフグ毒の正体である「テトロドトキシン」という成分の作用によるもの。神経は電気で刺激を伝えるものであることは前回お話ししましたが、テトロドトキシンはこの電気の伝達を遮断して神経の正常な働きを抑えてしまいます。その結果、障害された神経はしびれやマヒを起こしてしまうのです。フグの毒にあたった場合、20分から6時間の間にしびれなどの症状が現れ、最初に舌や唇、次に指先がしびれ、舌がまわらなくなります。
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軽症なら1日で全快しますが、重いと血管や運動神経が冒されて呼吸困難などにより死にいたることがあります。マフグたった1尾分のテトロドトキシンで30人以上の大人の致死量になるといいますから、まさに猛毒中の猛毒なのです。 こんな状態を続けていると、知覚を伝える末梢神経の機能が低下し、そこに異常電流が流れ始めます。そう、この電流こそがしびれの原因だったのです。つまり、ジ~ン、ビリビリは末梢神経が異常を知らせる生体の防御反応というわけです。この状態を続けていると「運動を命じる神経」も機能が低下し、しびれ・痛みを伝える末梢神経が機能を停止して無感覚の状態になってしまいます。
フグ毒によるしびれも、日常的に感じる症状としての肩や腰のしびれも、その大もとには神経における電流の異常があることは興味深いところ。しびれを避けるには、神経に流れる電流を正常に保つことが大切といえるようです。