胃がもたれる
Q.そもそも胃もたれとは?
「胃もたれ」という言葉に正確な定義はありませんが、一般的には食後の消化不良で、胃の辺りが重たく感じるような症状を指します。医学的には「ディスペプシア症状」と呼ばれる心窩部(みぞおち周辺)の症状の一部として扱われる場合が多いです。ディスペプシア症状は様々な要因が複合的に関与して出現しますが、代表的な要因別と胃薬について解説します。
「胃・十二指腸の運動能異常」
胃排出能障害
通常、胃は一定以上の食べ物が入ると、より多くの食べ物を受け入れるために一部が弛緩(筋緊張が取れる)し、それに引き続いて蠕動運動と呼ばれる、胃内で消化された食べ物を少量ずつ小腸側に送り出す運動が起こるが、この働きが鈍くなると、胃内に食べ物が長くとどまり、いわゆる「胃もたれ」状態となる。
十二指腸・胃逆流
上述した「蠕動運動」は通常、胃の入り口方向(食道側)から出口方向(十二指腸側)に時間をずらしながら進むことで食べ物を送り出しますが、この運動の協調性が保たれなくなると胃内に食べ物が長くとどまる原因となるばかりか、十二指腸(小腸)側から胃内への食残や消化液の逆流が起こるケースもあります。
おすすめの胃薬のタイプ
消化管運動機能改善薬
胃の運動機能を活発にすることで、胃の内容物を小腸側へ送り出すのを助ける働きをする薬のことを指します。
- アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
- ドパミン受容体拮抗薬
- セロトニン受容体作動薬
漢方薬
漢方薬の中にも胃の運動機能を改善する作用を持つものがあることが知られています。多くの科学的根拠による裏付けがなされており、その有効性が知られているものもあります。
「胃酸分泌による刺激」
胃酸の刺激に反応して症状が出現・悪化します。
胃酸による刺激が様々な上腹部症状と関連することが知られています。特に胃酸分泌を促す食品としてはアルコールや高脂肪食、チョコレートなどが有名で、これらの食品を避けるなどの生活習慣の改善も症状の緩和には有効です。
おすすめの胃薬のタイプ
酸分泌抑制薬
胃酸分泌過多に伴う胃もたれ症状に対しては、酸分泌抑制薬が有効です。
- ヒスタミンH2受容体拮抗薬
- プロトンポンプ阻害薬
- カリウムイオン競合型アシッドブロッカー
制酸薬
胃酸分泌抑制薬は胃酸の分泌そのものを抑えるのに対して、胃酸の酸性度を抑える目的のお薬です。即効性は期待できますが作用時間はより短いため、主に頓服薬として用います。(例:炭酸水素ナトリウム、沈降炭酸カルシウム)
「生活習慣の乱れ」
体調によって胃の症状が出現・悪化します。
睡眠不足や不規則な食事、ストレスに関連して胃もたれ症状が出現・悪化するケースもあります。まずお薬に頼る前に、日常の生活習慣を見直すことから始めましょう。
おすすめの胃薬のタイプ
粘膜保護薬・修復薬
胃粘膜の保護や、組織の修復作用をもつお薬です。
消化酵素
消化を助けてくれる役割を持つ酵素です。
健胃薬
いわゆる「胃薬」と呼ばれる類のお薬で、これまでに述べた様々な成分がミックスされたタイプのお薬です。
症状が長引く場合は病院受診を
ピロリ菌感染なども原因になる
単なる胃もたれと思っていたら、実はピロリ菌の感染に伴う症状だった、というケースや、その他の思わぬ病気が隠れている場合もありますから、症状が長引く際には自己判断せず、早めに病院を受診しましょう。また市販のお薬で症状が取れない場合にも、処方の薬剤では効能の異なるものがありますので医師にご相談ください。